Steam Deck

Steam Deck（スチームデック）とは

Steam Deckは、Valve Corporationが開発・販売する携帯ゲーム機型ゲーミングPCです。Advanced Micro Devices (AMD) 社と共同で開発され、2022年2月25日に発売されました。日本では2022年8月4日に予約受付が開始され、12月17日から発送が開始されました。日本を含む東アジアでのサポートと販売は、KOMODOが担当しています。KOMODOは、日本でSteamの決済事業を担当しているDEGICAのゲーム部門が独立した企業であり、「Valve Index」も販売しています。

開発の背景

Valveは2012年頃から、PCゲームをより自由に体験できるデバイスやフォームファクタを模索してきました。その過程で「Steam Machine」「Steam Controller」「Steam Link」「Valve Index」といった製品を開発し、PCゲームを自室だけでなくリビングなどでも楽しめるようにしてきました。その流れの中で、携帯型ゲーム機の構想も生まれましたが、当時のハードウェア技術ではSteamを快適に楽しめるレベルに到達していませんでした。

しかし、2018年頃からハードウェアの進化の方向性が明確になり、それまでの開発・製造経験で得た知識やスキル、ベンダーとの関係が結実し、プロトタイプの製作を開始しました。Steam Deckは、Valveの「オープンプラットフォーム」という哲学に基づき開発されており、ユーザーが自由にカスタマイズできるように設計されています。

発売前にサムスティックやSSDの交換方法を公開したり、iFixitと提携して交換パーツの販売や修理ガイドを提供しているのは、その表れです。ただし、Valveは分解・改造を推奨しているわけではなく、「自己責任で行うのであれば」という注意喚起をしています。デバイスの改造は自己責任であり、故障や不具合が改造に起因する場合は保証対象外となる点に注意が必要です。SteamOS以外のOSで運用している場合でも、基本的には保証が受けられますが、上記のような改造に起因する問題は対象外となります。

ハードウェア

Steam Deckには、AMDがZen 2とRDNA 2アーキテクチャをベースに開発したカスタムAPUが搭載されています。このAPUは、ファイナルファンタジーVIIのキャラクター、エアリス・ゲインズブールにちなんで「エアリス」と名付けられました。CPUは4コア/8スレッド、GPUは8つの演算ユニットで構成されており、合計1.6 TFLOPSの性能を発揮します。CPUとGPUは可変周波数で動作し、CPUは2.4～3.5GHz、GPUは1.0～1.6GHzの間でシステムの要求に応じて変動します。

Valveは、CPUはRyzen 3000シリーズ、GPUはRadeon RX 6000シリーズと同等の性能を持つとし、大型AAAゲームを含むSteamライブラリ全体をハンドヘルドゲーミングPCでプレイできるようにすることを目指しています。また、Deckにはハイエンドスマートフォンで使用される高速メモリ、LPDDR5 RAMが16GB搭載されており、総帯域は88GB/秒です。

ストレージは、64GB(eMMC,旧型機)、256GB(NVMe SSD)、512GB(ハイスピードNVMe SSD)の3つのモデルがあります。512GBモデルには、画面に防眩エッチング加工が施されています。その他のハードウェア仕様は全モデル共通です。ストレージはmicroSDカードで拡張可能で、UHS-I（～104MB/sec）、SDXC（～2TB）に対応しています。512GBモデルにはキャリングケースと仮想キーボードテーマが、256GBモデルと512GBモデルにはコミュニティで使用できる限定プロフィールの特典があります。内部ストレージはエンドユーザーによる交換は想定されていませんが、修理のために交換が必要な場合は可能です。

コントローラーは取り外しできませんが、追加のコントローラーを用意すればデスクトップのようにプレイできます。両端のコントローラー部分にはトラックパッドが搭載されており、Windows向けのPC用ゲームをプレイしたり、FPSの操作性を向上させることができます。バッテリーは40Wh(5313mAh)で、ゲームによって異なりますが、公称2〜8時間持続します。

ソフトウェア

OSは、Arch [[Linux]]をベースにしたSteamOSが搭載されています。ホーム画面では、Steamのライブラリ、ストア、コミュニティにアクセスできます。デスクトップモードに切り替えることで、PCのように使用することも可能です。SteamOSには、Valveが開発した互換レイヤー「Proton」が含まれており、認証されたWindows向けゲームをSteamOS上で起動できます。また、内部ストレージやmicroSDカードからのマルチブートに対応しており、Windowsをインストールすれば、Windows向けのゲームを直接起動することも可能です。

周辺機器

Steam Deckに対応した様々な周辺機器が販売されています。詳細は公式サイトをご確認ください。